伝習会 第41回
伝習会
〈 第四十一回 〉
【枕石漱流】(石に枕し、流れに漱ぐ)
【漱石枕流】(石に漱ぎ、流れに枕す)……世説新語(劉義慶)
(訳…負け惜しみが強く、自分の誤りに屁理屈を付けて言い逃れる事)
~ これは、次の話から生まれた故事です。
晋(280年頃)の時代に【孫楚】という人がいました。彼がまだ若い
頃、俗世間を離れ隠居して、山林に隠れ住もうと思い、友人の【王済】に
打ち明けました。その時、【枕石漱流】{【石に枕し、流れに漱ぐ】}と言うべきところを、うっかり『【漱石枕流】(【石に漱ぎ、流れに枕す】)の生活をしたい。』といいました。すると【王済】は『どうして、石で口をすすいだり、流れを枕に出来るんだい』とニヤニヤしながら、間違いを指摘しました。すると【孫楚】は少しもあわてず、落ち着いて『何も間違っていないよ。【枕石漱流】は俺も知っているよ。俺はただ応用したまでさ。いいかい、【石に口すすぐ】と言う事は、俗世間の賎しい物を食べた歯を石で磨こうと思ったし、【流れに枕す】と言うのは、俗世間の話を聞いて穢れた耳を川の流れで洗おうと思ったからさ』と切り返しました。
これを聞いた【王済】は、思わず【流石】と言って、拍手喝采したとか。
ここから【流石】が生まれ、【漱石枕流】から【夏目漱石】のペンネームにもなりました。【王済】と【孫楚】は大変仲のよい友達だったので、【孫楚】はとても頭が良く、トンチのある人だということを【王済】は知っていたのです。この位のトンチとユーモアが欲しいものですね。~