伝習会 第49回
伝習会
〈 第四十九回 〉
【人は恥なかる可からず】…………………言志晩録(佐藤一斎)
(訳…人間は恥を自覚しなければならない)
~ 皆さんも記憶に新しいことと思いますが、横井庄一さんが【生きて虜囚
の辱めを受けず】の一念で、敗戦を知りながらも、太平洋戦争の激戦地
グアム島のジャングルに住み続けて、昭和47年に祖国日本に、奇跡的に
生還しました。帰国の第一声に『恥ずかしながら、生きながらえて帰っ
てまいりました』が当時、流行語にもなりました。
亡くなる前年に横井さんが『新潮45』誌に、『恥ずかしながら生きな
がらえて、28年振りに帰ってきたが、日本に帰ってくるんじゃなかった』
という一文を寄稿致しました。
それは、日本が戦後50年の間に、日本人が最も大切にしてきた【恥】
の文化を忘れ、日本人としての誇りを忘れ、倫理、道徳心を失った国に
成り下がってしまったと、心情を綴ったものでした。
戦前の日本の教育が如何に素晴らしかったかが伺われます。
孟子も、【恥ずることなきを之れ恥ずれば、恥なし】(無知を恥じる心があ
れば、その人は恥ずべきことのない人だ)と言っています。
日本の文化は、【恥の文化】といわれ、世界から尊敬されてきました。
今の日本は、この【不正を恥じ】、【不義を恥じ】、【不徳を恥じ】、そして
【至らない自分を恥じ】る心を失った国になってしまったのではないでし
ょうか。
人間にとって、いや、日本人にとって、最も大切なこの【恥る心】をも
う一度、取り戻すべき時かと思いますが、如何でありましょうか。
☆…【恥と汗、かけばかくほど磨かれる】
☆…教育の原点は【敬と恥】(敬は自分を慎み、人をうやまう)~