伝習会 第54回
伝習会
〈 第五十四回 〉
【老驥は櫪に伏すも 志は千里に在り】…曹操(歩出夏門行)
(訳…克って、いくら名馬であっても年老いてしまうと世に用いられなくなります。しかし、名馬はいくら厩に繋がれていても、つねに志は千里の先を駆け巡ることを思っている)
~ これは、あの有名な三国時代(220年頃、魏、呉、蜀)、魏の曹操の詩句 です。曹操は魏の武将であり、政治家であり、大変な詩人でもありました。第四首にみえる詩句は、次のように歌っています。
【神亀は寿しと雖も 猶、竟る時有り。騰蛇は霧に乗ずるも 終に土灰と為る。】
(訳…長寿の象徴とも言われている亀でも、いつかは死を迎える。騰蛇(蛇神)は霧に乗じて大空に舞い上がるが、いつかは死んで土塊に戻る。)
【老驥は櫪に伏すも 志は千里に在り。烈士暮年 壮心已まず。】
(訳…しかし、千里を走る名馬は、年を取って厩につながれていても、その思いは、常に千里の彼方にある。同じように、勇者・志の高い人は晩年になっても、気概・崇高な志を抱き続けている)
【治世の能臣】(安定した世の優れた臣下)、【乱世の姦雄】(乱れた世の悪賢い英雄)と人物評価をされた曹操は、66歳で死ぬまで戦場を離れず、天下 統一の夢を捨てなかったそうです。私も、今年(平成二十年)、曹操の年 になりましたが……。群雄割拠する戦国時代をしたたかに生き抜いて、しかも円熟された人間味ある曹操の“列士暮年 壮心已まず”の志と情熱は、体力的に多少衰えの見えた私ですが、少しでも晩年の鏡みにしたいと思っております。~