伝習会 第75回
伝習会
〈 第七十五回 〉
【君は舟なり、庶人は水なり】……荀子
(訳…君主やリーダー、会社は舟であり、国民や庶人、社員は水である)
~ この後に、【水は則ち舟を載せ、水は則ち舟を覆す】とあります。
君主は舟、民は水。舟は浮くも沈むも水次第と言う事です。心ある君主は
国の安定を望み、良い政治を行なうには、先ず、人民を愛し、民を富ませ
ることを優先しなければならない。人民をないがしろにするような政治は
するな、と為政者の自覚を促しています。
会社においてもしかりです。荀子は君主(リーダー)と臣下(社員)と
の関係を次のように言っております。
1. 『権威と権限は全く異質』
『権限』とは、その立場に相応しい役割を遂行する為に与えられた職責であり、
決して威張る為の道具ではない。寧ろ、与えられた職責の重大さを自覚し、謙
虚で有らねばならない。『権威』は、その人の内面から出て来る一つの品格であり、
尊敬、畏敬の対象となるものです。
『権限』の意義を間違って理解し、専横の限りを尽くす経営者や幹部職員が多
いものです。このような『粉飾された権限』や『権威なき権限』はいずれ腐敗す
る宿命にある。と。
2. 『礼を尽くして』
事業は人なり、これはいつの時代でも変わりません。会社は経営者の人格の
鏡です。部門は部長の人格の鏡です。『社員にこうあって欲しい』と期待する
ならば、経営者や幹部社員が、先ず、鏡にならなければならない。
経営者や幹部から礼を尽くされてこそ、また、その部下も礼を尽くして人に
接して行けば、会社全体に礼を重んじる社風が生まれてくる。と。
3. 『水に従いつつ、水を制す』
しかし、いつも水に載るだけでいいとは言えない。水自体が暴れる事もある。
水を制することも大切な事です。また、部下も上司次第という受身ではなく、
『上司を生かす』、『立派な上司になって貰う』という努力も部下としての責務
である。と言っております。(第二十四回、第六十六回を参照)~