伝習会 第81回
伝習会
〈 第八十一回 〉
【瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず】…古楽府の君子行
(訳…瓜畑の中で、かがんで履をはき直すと、瓜を盗むのではないかと疑われるので、
そんなことはするな。また、スモモの木の下で、手を上げて冠を整えると、李を
盗むのではないかと疑われるので、そんなことはするな。転じて、人の疑惑を招き
易い行為はしないことの例えとして使われてきた。)
~ これは、次の「君子行」第四句の冒頭にある「漢代の歌謡」にあります。
【君子は未然に防ぎ】(君子たる者は、人から疑われるような事は未然に防ぎ)
【嫌疑の間に処らず】(嫌疑を受けるようなところには身を置かないものだ)
【瓜田に履を入れず】(瓜畑ではしゃがみこんで履を履くような仕草をすべきではないし)
【李下に冠を正さず】(李の下で冠を直したりはしないものだ)以下次のように続きます。
【嫂叔は親授せず】(密通を疑われないように、兄嫁とは親密に接するべきでない)
【長幼は肩を並べず】(年少者は年長者と対等な口を利いてはいけない)
【労謙にして其の柄を得】(功績があってもへりくだれば権力を得る事ができる)
【和光は甚だ独り難し】(自分の才能をひけらかさずに世間と強調すると言うのは難しいものだ)
【周公は白屋に下り】(周の武王の弟・周公は偉大な政治家であったが茅葺の家に住み)
【哺を吐き餐に及ばず】(お客が尋ねて来れば、食事中口に含んだ食べ物をはき出し、又入浴
【一たび沐して三たび髪を握る】中でも髪を束ねて出迎えた。立派な人材を得る努力)
【後世、聖賢と称せらる】(そうした態度であったからこそ後世聖賢と称された)
人から疑われるのは、理由はどうであれ、愉快な事ではありません。一寸したことで相手の疑惑を招く、こんなつまらないこともありません。それを避ける為には、やはり普段の言動を慎重にする以外ないのではないでしょうか。上記から、【兄嫁とは親しく話すな】とか、また【長幼の序】、【和光同塵】、【握髪吐哺】などの箴言の言葉があります。 ~