伝習会 第92回
伝習会
〈 第九十二回 〉
【道を守るは官を守るに如かず】……春秋左氏伝
(訳…臣下の言葉で歴史を忠実に記録する官の心得と責任感。人として守らなければならない道、徳にかなう行いは、自らの仕事をしっかり果たすのが一番である)
~ 先ず、2008年5月16日付け「日報抄」のコラムに次のような記事がありました。
『……道路特定財源(自動車の利用者が道路の維持・整備費を負担する受益者負担の原則に基づく目的税。H21年度より一般財源された)は田中角栄元首相が先鞭をつけたことはよく知られている。
当時、二百億円弱だったこの財布には、今や国と地方を合わせ五兆円以上が自動的に入ってくる。
この半世紀、中央と地方の間にある有形無形の格差解消で、その財布が果たした役割を疑う人はいな
いだろう。「初めの趣旨から外れて族議員や役人の飯の種になってきたが、政治が止められなかった」
元首相の長女、真紀子氏が再可決を受けて漏らした言葉は重い。【道を守るは官を守るに如かず】。
徳にかなう行いは、自らの務めをしっかり果たすのが一番と儒教の祖、孔子は言う。くれぐれも【道】
を踏み外さないよう願いたい』
次に、『貞観政要』にある唐の太宗皇帝と臣下の王珪との閑談を見てみましょう。
かって、廬江王だった李瑗が太宗に反乱し、李瑗が敗死した時、太宗は李瑗が愛した姫を自分の後宮に入れ
ていました。太宗は王珪に『そもそも、李瑗はふとどき至極な奴で、横恋慕した女を我が物にする為、
その夫を手にかけた。かかる悪逆無道な振舞いをした者は、必ずや身を亡ぼす事になろう』。
王珪は即座に下座し反問した。『陛下は、李瑗の振舞いを良い事とお思いですか、それとも悪い事とお
思いですか』太宗は『夫を殺してその妻を奪い取るなど、悪いことに決まっているではないか』
王珪は『陛下、「管子」にこんな話が載っています。「斉の桓公が、郭という国が滅びた原因はなにか」
とその邦人に尋ねたところ、「我が国の王は、善を喜び悪を憎むお方でした。それで滅びたので御座い
ます。」と答えました。
桓公は「そなたの申す通りなら、郭の王は賢君であったと言えよう。なぜ滅びた原因だというのか」
邦人はこう答えました。「そうではありません。郭の王は、善を喜びながらそれを用いようとはしませ
んでした。悪を憎みながら、それを退けることが出来ませんでした。それが滅びた原因で御座いま
す」王珪は太宗陛下に「ところで、陛下は今、一人の美人をお側にはべらせています。それで私は、
陛下が廬江王のしたことを良い事だと認めているのではないかと思ったのです。もし、廬江王の行為
を悪い事だとお思いになっているなら、陛下のされようは、まさに悪を悪と知りながら退けないとい
うものではありませんか」』太宗は王珪の言葉にいたく感じ入り、早速姫を親族のもとに返しました。 悪を知るのは易しいが、改めるのは難しいということでしょうか。何事も実行することですね。~