伝習会 第94回
伝習会
〈 第九十四回 〉
【その長を用いずして、その短を見る】……貞観政要
(訳…長所を見ないで、短所を見る。所謂、短所を見ずに長所を見よ。)
~ これは、唐の太宗皇帝と直言の臣.魏徴との次の会話にある言葉です。
魏徴は、太宗皇帝に凌敬という人を役人に登用するよう推薦しました。
ある者が、凌敬は公職にありながら、人から金品を借りるなど私生活が
出鱈目だ、と太宗に告げ口をしました。早速、魏徴を呼び出し追求した
ところ、魏徴は次のように答えたのです。
『私どもが、陛下に人物を推薦する際には、いつもその人物の長所と短
所を詳しく申しあげてきました。凌敬についても、長所は学識があってし
かも諫言を良くする事、短所は贅沢好きで利益をむさぼることだ、と申し
上げたはずです。近頃、凌敬は頼まれて碑文を作ったり、「漢書」の講読
を教えたりして、人から謝礼を受け取っています。私どもの上げた長所を
まだ発揮しておりません。陛下は、彼の長所に目を付けず、その短所だけ
を見て、私ども推薦人を詐欺師扱いなさいます。陛下のお言葉ですが承服
致しかねます。』
太宗はもっともだと頷いた、ということです。
これは、「短所を見るな」と言っても、「短所に目をつぶれ」という訳で
はありません。相手の短所と長所を十分に心得た上で、その長所を発揮
させるように、効果的な活用をすることが大切だと、いっております。~