伝習会 第95回
伝習会
〈 第九十五回 〉
【惻隠の心は仁の端なり】……孟子
(訳…思いやりの心は仁の端緒.つまり始まりである。「惻隠」は、人の不幸や危険に対して痛ましく思う心。「惻」は痛切に痛む事、「隠」も痛むこと)
~ これは、孟子の【四端の説】の言葉です。人間は生まれながらにして、
次の四つの心を持っておる。それは…
【惻隠の心は、仁の端なり】(かわいそうだと思う心は、仁の芽生えである)
【羞悪の心は、義の端なり】(悪を恥じ、憎む心は、義の芽生えである)
【辞譲の心は、礼の端なり】(譲り合いの心は、礼の芽生えである)
【是非の心は、智の端なり】(是と非、即ち善悪を判断する心は、智の芽生えである)
で、仁、義、礼、智への道に進む糸口・端緒になっているといいます。
孟子は「性善説」を唱えた人です。所謂、人間は生まれながらにして
善の心を持っている。が、しかし何も学ばなければ、悪の方へ行ってし
まう。だが、人間の本性は善であるが故に、教育をして、四つの“心”
を学べば立派な人間になれるといっております。
荀子は「性悪説」を唱えた人で、「人間の本性は“悪”である」。
だがしかし、教育をすれば、“善”の方向へ行くといって、孟子と同じく
教育の大切さを言っております。
今日、日本で使われている次の熟語は孟子が出典です。
【五十歩百歩】、【助長】、【私淑】、【教育】、【是非】、【自暴自棄】、【黄泉】、【匹夫の勇】、【余裕綽々】などあります。~