伝習会 第130回
伝習会
〈 第百三十回 〉
【無用の用】……荘子(書名はそうじ、名前はそうし)
(訳…世間で無用(役に立たないもの)と思われている物こそが、実は有用(役にた
つもの)なのだ。重要な役割を果たしている)
~ これは、【荘子】の次の言葉が出典になっています。
【人、皆「有用の用」を知りて、「無用の用」を知るなきなり】
(人は、有用なものが役に立つことは知っているが、無用なものが役に立つことは知らない)。 【無用の用】の反対が【有用の用】ですね。
世の中では、とかく役に立つ【有用の用】に価値があるとして、【無用の用】には目をくれようとしない傾向があります。しかし、無用なものや、ムダなものがたくさんあることによって、世の中が成り立っていることも、また、まぎれもない事実です。極端な例かもしれませんが、人間が歩くには、足の幅だけの道があればそれ以外は無用だといって、歩く幅だけ残して、後は削りとって「千仞の谷」としたら、人間は、歩けるでしょうか。歩幅以外は無用といっても、それが無ければ歩けないわけですから、【無用】のものこそ【有用】だといっております。
【無用の用】の役割を果たしている代表は、日常の挨拶です。【お早う】、
【有難う】、【ハイ】、【すみません】、【ご苦労さん】、【頑張ろう】また、
【年賀状】や【帰りに一杯】(これが一番大事?)などは、なくてもよいようなも
のですが、人間関係には無くてはならない大切な【無用の用】なのです。
老子も同じ、【無の効用】を次のように言っております。
「車輪、食器、家といった【有形】のものが役に立つのも、根底に空間という【無形】の働きが
あってのことだと、三つの例(車輪、食器、家)を上げて【無の効用】を説いています」~