伝習会 第136回
伝習会
〈 第百三十六回 〉
【病は口より入り、禍は口より出ず】…太平御覧…人事
(病気の原因は食べ物などが口から入って起こり、禍は口から出る言葉が原因で起こる。口を慎むことによって、悪い事が起きないようにする戒めの言葉です)
~食事は腹八分が健康の本、減らず口はたたくな、と幾度となく先輩に教えられてきましたが、随分痛い目にもあってきました。
さて【口は禍のもと】という意味の諺に【雉も鳴かずば撃たれまい】という言葉があります。その出典は以下の伝説に有ると言われています。
推古天皇の時代(621年頃)、淀川に架ける長柄橋は大変な難工事で、人柱を捧げなければならないという事になりました。その時“巌氏”という人が「袴に継ぎのある人を人柱にしなさい」と進言しました。しかし皮肉にも、“巌氏”氏自身が継ぎのある袴をはいていた為、“巌氏”氏が人柱になってしまったのです。嫁いだ娘は、父親が人柱になったショックで口をきくことが出来なくなった為、実家に帰されることになりました。夫と共に故郷に向かっている途中、一羽の雉が声を上げて飛び立ったので、夫は雉を射止めました。その様子を見た“巌氏”氏の娘は【物言わじ父は長柄の人柱 鳴かずば雉も射られざらまし】(父の巌氏は余計なことを言ったばかりに人柱にされてしまった。キジも鳴かなかったら撃たれなかったのに)と詠んだそうです。妻が口を聞けるようになったことを喜んだ夫は雉を手厚く葬って、妻と仲良く暮らしたそうです。余計なことを言ったばかりに災いを招いた由来です。~