伝習会 第138回 ①
伝習会
< 第百三十八回 >
NO.1
【孤に徹し、衆と和す】…元首相大平正芳氏の言葉
(訳…確固たる信念を持って、判断、決断する時は徹底的に自分を見詰め考え抜き、
しっかりとした自分を持ちながら人々と和していく)
~ 牛尾治朗氏の「わが経営に刻む言葉」より引用させて頂きました。
指導者は、孤に徹して自らを厳しい立場に追い込み、考え抜いて決断しなければなりません。それも毎日“判断と決断”の連続で、しかも孤独です。一人で下さなければなりません。しかし自らを律すると同時に、春風をもって人に接し、相手の言うことに誠実に耳を傾けて、心を砕き周囲と和する事を心掛けていくことが大切です。
中庸に【君子は和して流れず 強なるかな矯たり 中立して倚らず 強なるかな矯たり】(君子は他人と協調しながらも自分を見失って流されることはない。歪みを正す強さを有している。君子は中立して偏ることがない。歪みを正す強さを有している) これと似た言葉が論語にあります。
【君子は和して同ぜず 小人は同して和せず】(優れた人物は、自分の考えをしっかり持って誰とでも仲良く協調していくが、人とむやみに同調しない。つまらない人間は、すぐに他人の意見に調子を合わせるくせに、利害が合わなくなったりするとたちまち仲が悪くなる)どちらも似た意味と解してよろしいでしょう。岸元首相が【和して流れず】を好んで口にされていたそうです。戦後、吉田茂政権が【経済重視】と【軽武装】の二つを我が国の根幹政策としました。池田勇人政権は、所得倍増計画による経済重視を推進しました。岸信介政権は、軽武装を実際の政策として実現することに邁進し、その成果が、今日へと続く日米安保条約の締結です。昭和35年、日米安保条約改定に際しては、激烈な反対闘争が行われました。時の首相であった岸信介氏は毅然として安保改定を断行されました。日本の安全保障にとって日米安保条約改定は不可欠という強い信念を貫かれました。まさにリーダーはこうでなくてはなりません。岸総理の信念の正しさは、それからの日本が平和で、その平和に守られて高度成長を遂げたところに如実に示されています~