伝習会 第138回 ②
伝習会
< 第百三十八 >
NO.2
【君子は進み難く退き易し。小人は是に反す。若し小人、路を得ば、豈に去る可けんや】…宋名臣言行録
(訳…君子は権力に執着しません。だから容易なことでは地位を目指して名乗りを上げたり立ったりはしない。むしろ地位から遠ざかり、時にはさっさと引退してしまいます。反対に小人は、それだけの中味がないのに権力欲だけは旺盛です。そしていったん地位や権力を手に入れると、それにしがみついて手放そうとしません)
~ 今日本には優秀な人物はたくさんおります。しかし、優秀な人物が影響力の持てる地位に就いていません。なぜでしょうか?一つは今の競争社会がネックなっていると思う。商品やサービスの【質】を向上させるには、競争は有効です。一定のルールの下で競争することで、商品やサービスの質は確実に向上します。しかし、これは商品やサービスの話です。果たしてこれが人間に通用する話でしょうか。
競争によって優秀な人物を選び出し、その人物をしかるべきポストに就けることが出来るか、ということです。
安岡正篤氏は“小人と君子が重要な地位を争った時に、権謀術数渦巻く社会では小人のほうがはるかに説得がうまく、一方、君子はともすればバカ馬鹿しい争いを避けて山に籠ってしまう。結果として、つい君子を遠ざけ、小人を登用してしまうことが起こりがちである。そのため、中国において皇帝の最も重要な仕事とは、小人と君子を争わせることなく、君子をその相応しい地位に就けることだったのだ”と。
これを現在の民主主義下の“経済”と“政治”の関係に置き換えて考えるならば、即ち、“市場経済”のメカニズムは現状のままでいいとしても、こと“政治”の世界においては、真の君子をトップリーダーに据えるだけの見識と民意を示さなくてはならない、ということです。
政治を小人の手に委ねてしまうといわゆる【衆愚政治】となり世が乱れてしまいます。
今の国会議員の質はまさに衆愚の集まりです。
今後国民はいかに、君子をトップに置くかという適切な選択が出来るかどうかが今後の民主主義の大きな課題になってくると思います。
二十一世紀を生きていく為に、日本は君子を見出し、しかるべき地位に就けるための新しい社会システムを構築することが重要な課題になります。
国民もまた、【孤に徹し、衆と和す】る人物を選び出す意識と目を持ちたいものです。
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