伝習会 第139回
伝習会
〈 第百三十九回 〉
【恒産なければ恒心なし】…孟子(第二十三回参照)
(訳…【恒産】は安定した職業、または一定の収入。【恒心】はいつも変わらない心、
または心豊かな状態、よって人間は、安定した収入がなければ、いくら心豊か
に、穏やかな生活をしなさい、といってもそれは難しい。安定した収入が必要)
~ これは、斉の宣王に孟子が王道について説いた言葉です。それは……
【恒産無くして恒心ある者は、惟士のみ能くすることを為す。民の若き
は、即ち、恒産無ければ、因って恒心なし。……………】とあります。
一定の収入がなくても、不屈の精神で心豊かにやっていけるのは、学問
や教養のある、ごく少数の人だけです。一般の人は、一定の収入がなけれ
ば、心豊かに、穏やかな生活など出来ないものです。と説いております。
また、管子には、【倉廩実つれば礼節を知り、衣食足れば栄辱を知る】
と、(日本では、【衣食足りて礼節を知る】が一般的です)あります。
【倉廩実つ…】、国庫が潤えば、民は礼儀と節度を自ずとわきまえるよう
になるし、【衣食足れば…】、生活が豊かになれば、人は名誉と恥じを知る
ようになる。確かに、食うや食わずで、かつかつの生活をしていたのでは、
礼節どころではないでしょう。 このように、【経済】の安定の必要性を
はっきり説いた最初の思想家は、孟子と言われています。 政治に携わる
人の要諦であり、また、経営者もしかりでありましょう。
ところで、今の日本社会を見ますと、【衣食足りて礼節を知る】言葉は、すでに死語
となっているように思われますが如何でしょうか。全て根幹は教育に有りです。~