伝習会 第145回
伝習会
〈 第百四十五回 〉
【己の欲せざる所を、人に施すことなかれ】
…論語(衛霊公第十五)
(訳…自分がして欲しくないと思っていることは、人にもしないことである。)
~【子貢問うて曰わく、一言にして以って身を終わるまで之を行う可き者有り乎】、孔子の弟子・子貢が、なにか一言で生涯の信条としたいような言葉
がありますか、と尋ねた時、孔子が、【それ、恕か。己の欲せざる所を、人に施すことなかれ】と、それは人への思いやりであろうか。自分がして欲しくないと思っていることは、人にもしないことだよ、と答えています。【恕】は【仁】と同じ思いやりという意味です。この【恕】を分解すると【如】と【心】になり心の如くと読みます。相手の心は自分の心と同じだと言う気持ちで相手を思いなさい、という意味になって【仁】より重い言葉です。
孔子の最も重視した徳は【仁】です。同じ言葉を、〈顔淵第十二〉にも言
っています。【己の欲せざる所を、人に施す勿れ。邦に在りても怨みなく、家に在りても怨みなし】と、敬虔と思いやりを行動の中心とすれば、邦であろうが、家であろうが人から怨まれることはない。と言っております。
昔も今も、この人への思いやりの心は大切です。もし、この思いやりの心がなくなったのでは、世の中がすさんで、うるおいのない、住みにくいことになるのではないでしょうか。 ~