伝習会 第167回
伝習会
〈 第百六十七回 〉
【天を怨まず、人を尤めず】…論語(憲問第十四)
(訳…人間、長い人生のうちには、色々不遇なことに出遭い、誰彼となく怨みたく成
る時もありますが、誰を怨んでみても解決するわけではありません。自分のこ
とを誰も分かってくれないと言って、天を怨むこともなく、人をとがめる事も
なく、心静かに自らを反省し、自分の事は天だけが知っているだろう。そんな
心境に浸ることも大切だと、いっているのではないでしょうか。)
~ 孔子、73歳の生涯は、決して順風満帆ではありませんでした。生まれ
故国の魯で55歳まで魯公に仕えた後、辞して、【仁】を理想とした道徳
の政治を実現したいが為、諸国歴訪の旅に出ました。しかし、その夢も実
現せず、悲嘆のうちに68歳で帰国しました。むしろ、不遇の時が長かっ
た自らの人生に、おもわず口ずさんで出たのが、表記の言葉ではないでし
ょうか。原文は……
【子曰く、我を知る莫き也夫。…………天を怨まず、人を尤めず、下学して上達す。我を知る者は其れ天か】(私を理解してくれる者はいない。……私
は天を怨むこともなく、人を責めることもなく、ただ、日常の問題から出発して、よ
り高次なものへ到達するように、自らを向上させる事に努めてきた。そんな私を理解
してくれるのは天だけであろうか)と言って、自分の不遇は天意でもあろう、
か。しかし、私の態度を理解してくれるのは、それは、天だけであろうな
あ、と嘆息されて出た言葉だと思います。分かるような気がしませんか。
2500年前の教えが、今でも燦燦と輝いております。真理とはまさに、
未来永劫変わることがない、ということでしょう。【天を怨まず、人を尤
めず】、【下学して上達す】心掛けて行きたいものですね。~