伝習会 第192回 (H30.12.20)
伝習会
〈 第百九十二回 〉
【蟷螂の斧】…荘子
(訳…【蟷螂】はカマキリのこと。カマキリが獲物を狙うとき、また敵と戦おうと
する時、上半身を立ち上げ、前足を頭の上に大きく振り上げます。その様子を
斧を振り上げているように見立てたものです。転じて、弱者が自分の力量もわ
きまえず、強敵にむかうことの例えの意)
~ 【蟷螂の斧】と言えば、【身のほど知らず】で膾炙されています。
この故事は、【文選】と【荘子】それに【漢詩外伝】にあります。
【文選】には、<曹操は既に徳を失って頼る人間ではない。袁紹の軍に帰属したほうが良い>と言う趣旨を【劉備】に書き送った檄文の中に、曹操軍の劣弱な様子を、
【蟷螂の斧を以って降車の隧(みち)を禦(ふせ)がんと欲す】(カマキリが肘を怒らし
て大きな車のわだちを防ごうとしている)と言っています。
【荘子】には、【汝はかの蟷螂を知らざるか。その臂を怒らして、以って車轍に当
たるがごとき。即ち必ず任に勝えざるなり】(お前はあのカマキリを知らないのか。肘を怒
らせて車に向かっていくのを。負けると分かっちゃいないんだ。己の能力に溺れている愚か者よと)
一方【漢詩外伝】では、斉の【荘公】が狩りに出た時、一匹の小さな虫が、
その斧を振り上げ、馬車の前輪を叩こうとしていました。【荘公】がその姿に興味を持
って、御者に次のように聞きました。
荘公「これはなんという虫だ?」
御者「これはカマキリという虫です。この虫ときたら、進むことを知って、引くこと
を知りません。自分の力を考えないで、敵を軽んじます」
荘公「これが人間として生まれていたら、きっと天下に轟く勇士となっていたであろ
に。道を開けよ」と言って、カマキリに道をゆずり、馬車を遠廻りさせて狩りを
続けました。
【身のほど知らず】とかたづけるか、【荘公】のように、例え虫にでも【仁】、思いや
りと【勇】の心をもつか、百家争鳴でしょうが、【徒労】に終わらないことが肝心かと
思います。しかし、なにごとも【中庸】がいいのかもしれませんね。~