伝習会 第194回 (H31.1.10)
伝習会
〈 第百九十四回 〉
【門前雀羅を張る】…史記「汲・鄭列伝」
(訳…門の外は閑散として、雀が群がり、これを捕らえる網を張れるほどであった。
転じて、客が門外に満ち溢れるほど来ていたが、今は落ちぶれて、門前がひっ
そりとして寂しい事)
~ 史記には【門外可設雀羅】(門外雀羅を設くべし)、所謂、門の外に雀を捕
らえる網を張ることが出来るほど、訪問者もなく、門前の寂しい様子を形
容しています。表記とは反対に【門前市を為す】多くの人が訪れて、まる
で市場のような盛況を呈しているという言葉があります。白楽天は【寓意】
という詩で【賓客亦已に散じ、門前雀羅張る…権勢去ること尤も速や
かに、たとうれば、石灰の光の如し】この話を踏まえた出典です。
有名な平家物語の冒頭を引用してみましょう。
【祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色 盛者必
衰の理をあらわす。おごれる人も久しからずや。唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、ひとえに風の前の塵に同じ】(インドのお釈迦
様のお寺の鐘の音には、諸行無常、即ちこの世の全ての現象には、絶えず変化してい
くものだと言う響きがある。沙羅双樹の花の色は、どんな勢い盛んな者も必ず衰える
ものであるという道理を表している。世に栄え得意になっている者は、その栄えはず
っとは続かず、春の夜の夢のようである。勢い盛んで激しい者も、結局は滅び去り、
まるで風に吹き飛ばされる塵と同じようである)
【盛者必衰】(勢いの盛んな者もいつかは必ず衰え滅びるということ)は、平家
物語からの教訓です。合わせて【生者必滅】或いは【栄枯盛衰】は世の習いとは申せ、
我々は、唯いたずらに風評に振り回されて悲観するばかりで無く、心の宝(崇高な理
念)まで見失ってはなりません。食品には賞味期限があるように、我々の組織、人、
機械、製品等にも賞味期限はあるようですね。しかし、我々は、自己研鑽して、如何に賞味期限を延ばすかが必要であり、勤めではないでしょうか。~