伝習会 第195回 (H31.1.20)
伝習会
〈 第百九十五回 〉
【矛盾】……韓非子
(訳…この【矛盾】という言葉は、故事成語の中でもよく知られています。
前後が食い違って論理が合わないことの意)
~ この成語の出典は、周王朝の力が衰え、群雄が割拠して、方々で戦争が
起きた戦国時代(紀元前四〇三年~紀元前二二一年)に、ある武器を売る商人
から出た言葉です。露天で武器を売る商人の会話を記してみましょう。
楚の商人が【盾】と【矛】を売っていました。自分の【盾】を誉めて
「私の【盾】の固いことは、どんな武器でも、これを突き破ることは出来
ない」。また、自分の【矛】を出して誉めて言うのには、「私の【矛】は鋭
くて、どんな物でも突き通せないものはない」、と。
そこで、ある人が「君の【矛】で君の【盾】を突いたらどうなるのだ」
と問うと、その商人は答えることが出来なかった。と言う話からです。
原文は【陥すべからざるの盾と、陥さざるなきの矛とは、世を同じくして
立つべからず】(突き通すことの出来ない盾と、なんでも突き通す矛とは、この世に
同時には存在しない)。ここが【矛盾】の出典ですが、【韓非子】が、儒家(孔
子や孟子)に対する批判の例え話として言った言葉と言われています。
【韓非子】が言うには、「儒家は尭と舜(共に古代伝説上の優れた聖天子)を
聖天子とするなら、舜が尭に変わって聖天子になる必要はない。それは
先代の尭に何か欠点があったことになる。従って、儒家が尭と舜の両
方とも崇拝するのは、【矛盾】の例えのように可笑しい」と言っています。
【韓非子】は、性悪説の荀子に学び、利己心(他人のことを考えず、自分だけ
の利益を図ること)を基礎にした政治の道を説きました。
【韓非子】の【信賞必罰】(賞罰を厳格に行う事)と【形名参同】(言行の一致)
が知られています。 ~