伝習会 第18回
伝習会
〈 第 十 八 回 〉
【 刎 頚 の 友 】……史記
(訳…友の為に、喩え頚を刎ねられても後悔しない程の深い関係)
~ 趙の国の宰相・【藺相如】と将軍・【廉頗】との関係から生まれた言
葉です。 これは次の出来事が故事の出典です。
【廉頗】将軍は、宦官の文官である【藺相如】の上官でした。ところが、
【藺相如】は大国・秦の昭王に二回招聘され、その都度、屈辱を受けな
がらも、二回とも趙の恵文王の名誉を守りました。
ある時、秦の昭王が趙に【和氏の璧】という国宝があるということを聞き、それを騙して取ろうと画策したが、【藺相如】が無事に持ち帰りました。
そこで、恵文王は【藺相如】を最高位の宰相に就けました。それを知った【廉頗】将軍は面白いはずがありません。今度会ったら、とっちめてくれようと、大変な剣幕でした。これを聞いた【藺相如】は病と称して、外出を止めたり、極力会わないようにしました。このような主人の振る舞いに、臣下は「ご主人の匹夫のような振る舞い、またそれを恥じない態度には、もう我慢出来ません」と言って辞職を願い出ました。すると、【藺相如】は「強大なる秦国が我が国を攻めない訳を、お前達は分からないのか。それは、わしと【廉頗】将軍がいるからだ。若し、今、わしと 【廉頗】将軍との間に亀裂が生じたら、それこそ秦の思うツボ、わしが、あのような行動を取るのは、わが趙国の為なのだ」と家臣を諭しました。この話はたちまち、宮中に広まりました。
これを聞いた【廉頗】将軍は己の不徳を恥じ、【藺相如】に心から心服しました。
その時、【廉頗】将軍は「貴方の為なら、例え頚を刎ねられても悔いはありませ
ん」すると、【藺相如】も「私も将軍の為なら喜んで頚を刎ねられましょう」と
言って二人は【相与に驩びて刎頚の交わりを為す】となったのです。
かって、田中角栄と小佐野賢治との間を【刎頚の友】といわれたことが、今更
のように思い出されます。【藺相如】にまつわる故事は他に、【完璧】や【怒髪天
を衝く】などが良く知られています~