伝習会 第21回
伝習会
〈 第二十一回 〉
【人心これ危うく、道心これ微かなり】……書経
(訳…人の心というものは、強いようでいて不安定で、時により変わり易く、なんと
も危ないものである。反面、優しく思いやりの気持ちがあるが、それが表に現れる
のは、ほんの僅かである)
~ 人間の心には、矛盾した心があると言っています。一つは【道徳心】・
【道心】です。それは相手の長所を誉めたり、尊敬したり、そして愛情や
思いやりの気持ちを育てようとする忠恕の心(思いやり)です。
もう一つは【利己心】・【人心】です。これは反対に、相手の短所を責め、
悪口を言ったり、罵ったり、他人の立場を考えない心(自らの心を壊す心)と
があります。
この二つの心は、豹変し易く、【道徳心】が働いたと思ったら、一瞬にし
て【利己心】に変わります。また、反対に【利己心】が【道徳心】に変わ
るという特性があります。
例えばある人から、何か相談を受けた時、人間はとかく何とかしてやり
たい、という思いやりの心、【道徳心】が働くものです。ところが、その
人が、陰で自分を裏切るような言動があって、それが耳に入ったとすると、
途端に相手を責める心、【利己心】に変わってしまいます。
このように、人間の心は、【道徳心】と【利己心】とが背中合わせに存在
しています。残念ながら、人間は【利己心】が圧倒的に強く、【道徳心】を
働かせる心は、非常に微かだといいます。
しかし、皆さん、私達は決して一人では生きて行けません。皆が仲良く、
明るく、楽しく暮らすには、一人ひとりが、感謝の心、思いやりの心、
【道徳心】をより強く、大きくするように、 自らを向上する努力が大切で
はないでしょうか。~