伝習会 第42回
伝習会
〈 第四十二回 〉
【創業と守成と孰か難き】……貞観政要
(訳…国家経営の大事業を始めてある程度軌道に乗せることと、既に出来上がり健全
な状態を守り続けるのとどちらが難しいか。会社の創業と守成、どちらが難しいか)~ これは、唐の二代皇帝(626年)の【太宗】が、臣下の【房玄齢】と【魏徴】
に【創業と守成】について尋ねたところからの故事です。
【太宗】…【創業と守成と孰か難き】か、と尋ねました。
【房玄齢】…「それは何と言っても【創業】でしょう。天下が乱れ秩序が定まらないうちは、群雄が割拠して帝位を狙って争い、それに打ち勝って天下を統一するのですから、【創業】の方が難しいと思います。」
【魏徴】…「いやいや、私は【守成】の方が難しいと思います。艱難辛苦して手に入れた天下も時間が経つにつれ次第に気持ちが緩み、酒池肉林の贅沢三昧の暮らしになって国は滅びて行くのです。【夏の桀王】、【殷の紂王】、【隋の煬帝】など良い例ではありませんか。緊張感を持ち続けて維持していくというものは、実に難しい事だと思います」。
【太宗】…「よく分かった。【房玄齢】は、昔わしに従って天下を平定し艱難辛苦を舐め、九死に一生を得て今日ある。そなたにしてみれば、【創業】こそ困難であると考えるのも無理はない。一方【魏徴】は、わしと共に天下の安定を図りながら今ここで、少しでも気を緩めれば、必ず滅亡の道を歩むに違いないと心配している。だから、【守成】こそ困難であると申したのであろう。しかし、最早【創業】の困難は終わったのであるから、今後はそち達と共に、心して守成の困難を乗り越えて行きたいと思う。」と自らを戒めています。『太宗』は【貞観の治】と呼ばれる立派な時代を築きました。しかし、唐の六代皇帝(712年)の玄宗は【開元の治】と呼ばれる隆盛の時代を築いたが後半は、皆さんもよくご存知の『楊貴妃』に溺れてついに国を滅亡させています。いかに【守成】が難しいかという良い手本ではないでしょうか。『魏徴』は、諫臣として大変名高い人でした。
【細行を矜まずんば終に大徳を累わす。山を為ること九仞功を一簀に虧く】(書経)
【安きに居りて危うきを思う】(貞観政要)
【人生意気に感ず。功名誰か復論ぜん】(これは、魏徴の述懐)~