伝習会 第88回
伝習会
〈 第八十八回 〉
【傾城傾国】(城を傾け国を傾ける)……漢書
(訳…都の至るところで、大騒動を引き起こすほどの絶世の美女を意味する四字です)
~ 「傾城」の「城」も、「傾国」の「国」も共に、城壁をめぐらした大都
市をいいます。「漢書」の外戚伝に李延年が作った、次のような歌があり
ます。
【北方に佳人有り】(北方に絶世の美人がいる)
【絶世にして独り立つ】(群を抜いて独り立っている)
【一顧すれば人の城を傾け】(一たび顧みると町中が騒動となり)
【再顧すれば人の国を傾く】(再び顧みると都中が上を下への大騒ぎになる)
【寧んぞ知らず傾城と傾国と】(例え傾城傾国したとてかまわぬではないか)
【佳人は再び得難し】(こんな美人は二度と手に入らない)
現代でも、空港や舞台などで、美男.美女の俳優.タレント.スポー
ツ選手などを、一目みんと殺到する群集の騒動は、まさにこのような光景
ではないでしょうか。
しかし、歴史は、美女に溺れて、国王が国を失った例を多く証明してい
ます。紀元前2、000年頃、夏帝国最後の帝・桀王の妃末喜、紀元前
1、000年頃、殷帝国最後の帝・紂王の妃妲姫、呉王夫差の西施、項羽の虞美人、玄宗皇帝の楊貴妃など、まさに、その例でありましょう。
さて、私達も【殷鑑遠からず、夏后の世にあり】(殷の国が鑑とすべきもの
は遠くに求めなくても、前代の夏の国の滅亡がよい戒めである)で、決して、
遠くに求めずとも、近くに戒めとすべきことが、あるような気が致します、
が。~