伝習会 第89回
伝習会
〈 第八十九回 〉
【家書 万金に抵る】……杜甫の「春望」
(訳…家族から届く手紙(家書)の有り難さは万金にも値する)
~ これは有名な杜甫の五言律詩「春望」の一句ですが、まず、全詩を一緒に
声を出して詠んでみましょう。
【国破れて山河在り】(都長安は安禄山の乱により破壊されたが、周囲の山や川は昔のままだ)
【城春にして草木深し】(荒れ果てた長安の町にも春がやって来て、草や木が深々と生い茂った)
【時に感じては花にも涙を濺ぎ】(あの戦乱を思い出すと胸が痛み、花を見ても涙がにじむ)
【別れを恨んでは鳥にも心を驚かす】(家族との別れを怨み、鳥の声にもハッと驚く)
【烽火 三月に連なり】(戦いの狼煙.戦火は三ヶ月たっても止む気配がない)
【家書 万金に抵たる】(疎開した家族からの手紙は万金の値打ちがある)
【白頭 掻けば更に短く】(心痛のあまり、白くなった髪を掻けば掻くほど短くなっている)
【渾べて簪に勝えざらんと欲す】(もうすぐ冠を止めるかんざしも挿せなくなるだろう)
唐の第六代皇帝・玄宗は、世にいう「開元の治」と言われた素晴らしい政
治をおこなったが、晩年、政治に倦み、楊貴妃に溺れ、挙句の果ては、子飼
いの安禄山が反乱して、長安の町が壊滅状態となりました。止む無く退位さ
せられたが、これも自業自得というものでしょう。
【安きに居りて危うきを思う】(平穏で安泰な時こそ一層気を引き締め、いずれやって来るかもしれない危機に備えよ.佐伝)に、(第六十七回参照)リーダーの心構えを警告しています。~