伝習会 第105回 ①・②
伝習会
< 第百五回 >……その1
【亢竜悔い有り】……易経
(訳…【亢竜】は、天高く上りつめた竜。天高く上りつめた竜は後で悔いが生ずる)
~ 【易経】は四書五経の【五経】の中の一つで、“兆し(萌し)”の専門書とも言われています。例えば、2月の立春を過ぎて風が暖かくなり、梅の花のつぼみが膨らめば、もう春が近いことは誰の目にも明らかです。
そういう変化を“兆し”といいます。しかし、この“兆し”は、はっきりと目に見えるものではありませんが、たとえ“兆し”に気がつかない人がいたとしても、国のリーダーたる政治家や経営者、人の上に立つ人はこの“兆し”を見極めることが大切です。そこで、この【易経】の冒頭に君子のとるべき道、人間として歩むべき道を【竜】が成長していく過程を六段階に分け、君子を竜になぞらえて説明をしています。
先ず第一段階は【潜竜】です。生まれたばかりの竜は地に潜んでいます。実力も経験も無い【潜竜】の段階の者を重い役職に急いで就けてはいけません。しかし、ただ手をこまねいて寝て待っていろというわけではありません。将来に向けて大きな確固たる志を立てることが肝心なのです。
この期間は全く不遇の時です。人から相手にされず、辛い思い、悔しい思いを沢山します。だからこそ志が強くなっていきます。誰に認められなくとも徳を積んでいくと、その光は自然と地から漏れ出てきます。~
伝習会
< 第百五回 >……その2
【亢竜悔い有り】……易経
~ 生まれたばかりの第一段階の【潜竜】は第二段階の【見竜】へと成長してゆきます。【見竜】の【見】は地上に出て姿が見える、自分の視野が開ける、そして自分を見出してくれた人に出会う、などの意味があります。この【見竜】の時期にすべき事は大人に学ぶ事なのです。只ひたすらに大人を真似ることで基本や型を体得するのです。
夢や志を想像していた地中から現実の世界へ出てきたばかりの【見竜】は、大人の言動を目に焼き付けることで倫理観が養われていきます。
【潜竜】から【見竜】へと成長した竜は、第三段階の【君子終日乾乾す】
(君子は終日努めて怠らず)の段階へと進んでいきます。
この段階は大人から一歩離れて独り立ちをし、第二段階の【見竜】の時に身に付けた基本や型を実践で生かし、応用力を付けていく時期です。
兎に角、積極果敢に高揚感を持って努力をし物事を推し進めていく事なのです。そして、日が沈んだら心静かに一日を振り返って反省をすることが大切だといっております。
六つの成長段階でこの第三段階の【君子終日乾乾す】が最も長い期間です。~