伝習会 第110回
伝習会
〈 第百十回 〉
{【子曰く、甚だしいかな、吾が衰えたるや】
(訳…孔子が言われた。「何と甚だしい事だ、私の衰えたのも」)
【久しきかな、吾れ復夢に周公をみざるなり】}論語(述而第七)
(訳…「もう随分久しいなあ。私がもはや夢に周公を見なくなってから」)
~ 孔子が、理想的な人間像として特に尊敬した人は、『斉の名宰相・晏子
(第百八回参照)、鄭の名宰相・子産、そして、孔子が一番理想としたのは、
周の建国の偉大な指導者であった、周公旦であり、最後に衛の大夫・
蘧伯玉(第二十二回参照)』の四人で、論語の中で称えております。
孔子は、常に周公旦の夢を見ていたというのですから、如何に、周公
に思いを入れていたかが伺われます。孔子は、周公をお手本として、究
極の社会、理想的な社会の実現を描いていた、本当に真剣な理想追求者だ
ったと思います。人間は、真剣に理想、志を追求すると、理想としている
人の夢をみるのでしょうか。夢を見るくらいでないと真剣でないのかも知
れません。
周公旦に関して、もう一つ、次の文章があります。
【子曰く、如し周公の才の美有りとも、驕且つ吝ならしめば、其の余は観るに足ざ
るのみ】
(訳…孔子が言われた。「例え周公のような才能の美があっても、人に驕り且つ吝嗇であったなら
ば、其の他のことは観るまでもない。他の事がいくら良く出来ても、論ずるに足らない」)
孔子は、どんなに才能、手腕があって偉大な人間でも【驕(おごり)】かつ【吝(けち)】なる人は、【徳】が無く価値のない人間と言っています。~