伝習会 第112回
伝習会
〈 第百十二回 〉
{【惻隠の心は仁の端なり】(他人の不幸を切に憐れみ深く痛む心
がやがて仁・思いやりの心の芽生えである。)
【羞悪の心は義の端なり】(自分の不義・不正を恥じ、にくむ心は、義・
正義、正しい心の芽生えである。)
【辞譲の心は礼の端なり】(辞退して人に譲る心は、礼・人を敬い、身
を正す心の芽生えである。)
【是非の心は智の端なり】}(是を正・善として、非を不正・悪とする心
は、【智】・理解する心の芽生えである。)
~ これは、孟子の【性善説】で、【四端の説】とも言われている言葉です。
孔子は、第六十一回でも述べましたが、人間の性については、【性相近し、
習い相遠し】というだけで、性そのものについては、善であるとも悪であ
るとも言っていませんが、ただ、【素直】な心が大切で、聖人の教えや礼
などを素直に受け入れれば善になるし、受け入れなければ悪になる。
どちらにでも変わるといっています。
孟子は、人間は生れつき人の不幸を黙って見過ごす事が出来ない心、【人
に忍びざるの心】があるといっており、それに孔子の【素直】さを発展展
開し、更に、学問・修養することによって【惻隠】、【羞悪】、【辞譲】、【是非】
の心を拡充すれば、【仁・義・ 礼・智】の徳を身に付けれることが出来る
といっております。
最近の世相を見るにつけ、殺人、偽装、不祥事など等の報道がない日は
ありません。孟子は、この【四端の説】を「四海」(世の中)に拡充する
ならば、必ず、安らかな、平和な世の中になると説いています。~