伝習会 第116回
伝習会
〈 第百十六回 〉
【君子は器ならず】……論語(為政第二)
(訳…【君子】・は、幅広い教養と見識を兼ね備えた人物。【器】・は、用途が限られている物(例えばコップはコップの用途にしか使わない)。よって、君子たる者は一部の偏った知識や見解に捕らわれない幅広い教養と見識を兼ね備えた人物でなければ勤まらないということ)
~ 【君子】を二通りに考えてみました。一つは為政者です。いわば人民の上に立つ階層の人々です。もう一つは、人格の優れた人々という意味です。
私は、この【君子】を政治家、経営者、上に立つ者と捉え、そういう人は、【器】・道具を使う立場にあるのであって、道具ではないと理解しました。
器物というものは、ある用途の為に作られ、特定の機能を果たすための手段として作られたものです。之を今日の経営に置き換えて見ると君子は【マネージャー】、器は【スペシャリスト】ということになるでしょうか。
【マネージャー】は特定の専門を持つのではなく、専門を持った人々が仕事をし易いようにマネジメントするのが任務であって、自分が直接に手を下すのではありません。【君子】は、官僚や社員そしてスペシャリストをいかに使えこなすことができるかが大切だと思います。
この後に、子貢が同じく君子の資格を問うています。
【子貢、君子を問う。子曰く、先ず其の言を行うて、而うして後に之に従う】子貢が君子の資格を問うたのに対して、先ず言いたい事を実行して、その後で自分の主張を述べる人こそ君子である、と。所謂、不言実行が君子たる資格だといっています。(有言実行も君子です)
また、次のようにも言っています。
【子曰く、君子は周して比せず。小人は比して周せず】
君子は人々と広く親しむが、特定の人達だけを優遇するような「なれあい」の交遊は好まない。理性的である。一方、小人(つまらない人間)は、お互いの利益を図る為の交遊を求め、「おもねりやこびへつらい」に満ちたものとされている、と。
孔子がいう、【君子は器ならず】、これこそ、人の上に立つ者の資格であり要諦ではないでしょうか。~