伝習会 第141回
伝習会
〈 第百四十一回 〉
【狡兎死して良狗烹らる】……史記
(訳…すばやい兎(うさぎ)が死ぬと忠実な猟犬も用済みとなり、煮て食べられる。
転じて、目的が達成されると、功績のあった者も利用価値がなくなり冷たく捨
て去られる例え。用済みになった者はお払い箱になるという例え。)
~漢王朝劉邦の三傑【簫何・張良・韓信】の一人、【韓信】にまつわ
る言葉です。高祖(劉邦)は、項羽との五年に及ぶ戦いのすえ、天下を
平定すると、今まで一緒に闘ってきた重臣に対して、疑心暗鬼の芽が生じ
てきました。それを察知した【韓信】の部下であった【蒯通】が、【狡兎死
して良狗煮られ、高鳥尽きて良弓蔵され、敵国敗れて謀臣亡ぶ】とあ
ります。【劉邦】に見切りを付けて天下を狙いましょうと言ったが、【韓信】
は聞きませんでした。ところが、【韓信に謀反の企てあり】と密告され、
とうとう、【韓信】は捕らえられてしまいました。その時に上記の故事に
ならって、“天下が平定されたからには、わしが煮られるのも元より当然
であろう”。ただ、【蒯通の言うことに従わなかったことが心残りだ】と言
って悔しがったが、時すでに遅しで処刑されてしまいました。【臥薪嘗胆】
で、越王・公践の無念を晴らしてやった名参謀・范蠡は、この故事に習っ
て越を脱出して助かっています。一方、呉王・夫差に使えた名参謀の伍子胥
は、殺されてしまいました。現代でも、創業時の仲間同士は、一致団結し
て努力するが、一旦成功すると仲間割れするということが、形は違っても
多かれ少なかれ、このような事例はあるのではないでしょうか。~