伝習会 第142回
伝習会
〈 第百四十二回 〉
【敗軍の将兵を語らず】……史記(淮陰侯列伝・韓信のこと)
(訳…戦いに敗れた将軍は兵法について語る資格が無い。失敗した者はその事につい
て意見を述べることはしない。)
~ 【韓信の股くぐり】で有名な漢の総大将・【韓信】が、自軍1万2千、
方や趙軍二十万との対戦で、【背水の陣】(第三回参照)を布き、趙軍にまさ
かの大勝をしました。趙の敗因は、趙軍の大将・【陳余】が、智将・【広
武君】(李左車)の戦略を無視し、採用しなかったからです。【韓信】は知
略に長けている【李左車】をよく知っていたので、賞金まで懸けて、生け
捕りにしました。そして、【韓信】は【李左車】に敬意を表し、今後の戦
略を問うた時、【李左車】から次のような言葉が出ました。それは、
【敗軍の将は以って勇を言うべからず。亡国の大夫は以って存を図るべ
からず】(敗軍の将は兵法について、語る資格はない。国を滅亡させた大夫は、国の
存亡を語る資格はない)と、感謝をしながらも黙しました。しかし、【韓信】
が重ねて助言を求めたので、【知者も千慮に必ず一失あり、愚者も千慮に
必ず一得あり】(賢明な人でも、よく考えて実行しても、千に一つの失敗はある。反
対に【愚者一得】といって、暗愚な者でも、熟慮断行すれば、たまには成功するという
こと)と謙遜をして所見を述べた、と言われています。【韓信】も立派だ
し、【李左車】も立派ですね。やはり、人を見下したりせず、謙虚に、敬
い(敬には、相手を敬うことと自分を慎むの意味がある)の姿勢が大切と言う事でしょう。【韓信の股くぐり】、【国士無双】、【背水の陣】、【成るも蕭何、敗るも蕭何】など【韓信】にまつわる名言は多いですね。~