伝習会 第152回
伝習会
〈 第百五十二回 〉
【大弁は訥なるが若し】…老子
(訳…すぐれた弁舌家は無駄なことを言わないから、むしろ口下手なようにみえる)
~ 本当に説得力がある人の雄弁は、訥弁の人と変わりがないといっていま
す。 これは、次の言葉の中にある一つです。(老子.45章)
1.【大直は屈するが若く】(本当に真っ直ぐなものは一見曲がったように見える。)
2.【大巧は拙なるが若く】(本当に優れた技術・手腕・手法は稚拙なように見える。)
3.【大弁は訥なるが若し】(本当に説得力ある雄弁は訥弁と変わりがない。)
上記2は、ことさら技巧をこらそうともしないし、ひけらかそうともし
ないので、技や芸を磨きに磨いた結果、多分こういう姿に見えることがあ
ります。また、3では、訥弁は雄弁に勝るといっていいかも知れません。確かに、立て板に水のような雄弁は、以外に説得力がないように思います。しかし、訥弁がいいからといって、主張すべき時にものが言えないようでは、これも困ります。主張したいことを主張できるように、弁舌を磨くことは勿論大切であります。類義語として次の故事もあります。
【知る者は言わず、言う者は知らず】…老子(深く理解している人ほど寡黙であ
るのに、生半可な人ほどしゃべりたがる。軽々しく口にするのは理解していない)
【大賢は愚なるが如し】(本当に賢い人は、知識を表面に見せないから一見愚かなように見える)
【能ある鷹は爪を隠す】(すぐれた実力のある人は、みだりにそれをひけらかすようなことはしない)
【君子は言に訥にして行いに敏ならんことを欲す】…論語(発言は訥弁でもいい、
そのかわり行動は機敏でありたい)。【訥言敏行】はここが出典です。~