伝習会 第153回
伝習会
〈 第百五十三回 〉
【天高く馬肥ゆる秋】…漢書・匈奴伝
(訳…秋は空が澄み渡って高く晴れ、馬も肥えてたくましくなる。秋の好時節をいう語)
~ 本当に秋らしくなって来ました。【読書の秋】とか【スポーツの秋】、【芸
術の秋】また【実りの秋】、そして一番うれしいのは何と言っても【食欲
の秋】でしょう。【秋茄子は嫁に食わすな】というほど、秋の物は美味し
いと言うことでしょうが、腹も身の内、食べ過ぎに注意しましょう。
さて、この【天高く……】は、元来、中国では【秋高く馬肥ゆ】の故事
で知られています。秦、漢、隋、唐など、中国の歴代王朝にとって最大の
外患は、北方民族(匈奴)の騎馬遊牧民族の侵略でした。彼らは、秋にな
って馬が丸まると肥え、勇猛な騎馬軍団が編成出来るようになると、大挙
して馬に乗って南方へ侵攻、略奪に来る訳です。そういうことから、
「秋になると、辺境の異民族(匈奴)が攻めてくるから、防戦の準備を怠ってはならない」、という戒めの言葉になりました。
これは、漢の【昭帝】が、将軍【趙充国】に匈奴の対策について下
問した時、次のように答えた言葉です。
【秋に到れば馬肥え、必ず変起こらん。宜しく使者を遣わして辺兵を行ら
しめ、予め備えを為すべし】(色々な対策を立てるにしても、結局のところ馬
が肥える秋になれば変事が起き、戦いとなるから、辺境に使者を送って、守備兵を
固めておく必要がある。)
あの、秦の始皇帝さえ、その対策に頭を悩まし、遠大な“万里の長城”の建造に着手せざるを得なかったことが、分かるような気が致します。~