伝習会 第156回
伝習会
〈 第百五十六回 〉
【心は小ならんことを欲して、志は大ならんことを欲す】
(訳…心は綿密であって、志は高く、大きくありたい。言いかえれば、いかに大きな
志を抱いていたとしても、心遣いが綿密でなければ大志を遂げる事は出来ない。)
劉安・【淮南子】
~ 人間は大きな目標に向かって行く時、ともすればその途上にある小さな
ことを軽視してしまいがちなところがあります。しかし、小事を疎かに
して大志はならないと忠告しています。
周の【武王】が殷の【紂王】を倒して天下を得た時、ある小国から贈
られてきた、人間の言葉が分かるという犬に大変興味をもって、政治を怠
るようになりました。すると、重臣の【召公】が次のように【武王】を
諌めました。
【夙夜努めざるあるなかれ、細行を矜まざれば終に大徳を累わす。】
(国王たる者は、朝早くから夜遅くまで、常に政務を怠るようなことがあってはなりません。小さな行いを疎かにすると大きな徳を失うことになります。)
【山を為ること九仞、功を一簣に虧く】(第六十回参照)
(高い山を築くとき、一モッコの土を積む事を怠っては山が完成したとは言えない。)
【召公】は、「今、周の国を開いたとはいえ、まだ基礎が固まった訳で
はありません。それなのに、犬などに心を奪われているようでは、いまま
での努力も水泡に帰してしまいます」と。まさに、
【良薬は口に苦くして病に利あり、忠言は耳に逆らえて行いに利あり】
(第九十三回参照)でありましょう。~