伝習会 第161回
伝習会
〈 第百六十一回 〉
【山中の賊を破るは易く、心中の賊を破るは難し】王陽明
(訳…山の中にいる賊を退治するのは易しいが、自分の心の中にいる賊を退治するのは難しい。)
~ この言葉は、陽明学の始祖・明の【王陽明】が、戦陣の中から弟子達に
送った手紙の中に書いたものです。【王陽明】は県知事に任ぜられたり、
又、各地の反乱軍を平定したり、文武両道の高潔な人でした。
【山中の賊】を破ることも簡単ではないかも知れないが、破れないこと
はない。しかし、【心中の賊】を破ることは、なかなか難しいと言ってい
ます。では、【心中の賊】とは、一体何を指しているのでしょう。
人間、誰しも持っている「自慢したい気持ち」、「見せびらかしたい心」、
「驕り高ぶる気持」こういう欲望を指しており、この欲望や邪念を、修養
によって押さえ込む努力を怠るなと、激励しています。また、【陽明】は
【伝習録】の本の中で、【知行合一】(知と行は表裏一体をなしていなければな
らない。所謂、【知】(知識、知っている事)と、【行】(行動、実践)は、【合一】(表
裏一体、合致)していなければならないという考え方)を唱えた人でもあります。
ただ単に豊富な知識を誇っているだけでなく、その知識を実践に生かして
いく事こそ、自らを高め、組織を活性化する最大の方法だと言っておりま
す。【孔子】も次のように言っております。{子貢、君子を問う。子曰く、
【先ず其の言を行うて、而して後に之に従う】}(言語として表すべきものを、
先ず行動として表し、その後に言語が行動を追っかける。いわゆる、不言実行です)~