伝習会 第169回
伝習会
< 第百六十九回 >
【巧言令色、鮮なし仁】…論語(学而第一、陽貨第十七)
(訳…心にもないお世辞を言ったり、上辺だけの愛想笑いをする人は、本当の思いやりの心に欠けている。【仁】即ち、人を思いやる気持ちは少ない)
~ 宮崎市定氏は、【巧言令色】を「猫なで声でお世辞笑い」と表現してい
ます。うまい表現ですね。この手の人は、昔も今も変わらないようです。人の顔色を見ながら、歯が浮くようなお世辞を並べたり、心にもない文句で人の歓心を呼ぼうとする人間は、何か下心があると思って用心するに越したことはありません。
【仁】とは、今までにも何回か取り上げましたが、『思いやりの心』、『心
の温かさ』でしょうか。【徳】の中でも最も重要な【徳目】の一つです。
では、いかめしい顔をしていれば良いかと言えば、必ずしもそうでは有りません。やはり、心が温かく、その温かさがおのずと顔や態度・型となって出てくる、そういう心の温かさが欲しいものです。
【巧言令色】は誉められることではありませんが、さりとていかめし
い顔をして全く人を無視するよりは、少ないけれど少し【仁】がある、つ
まり【鮮なし仁】で、全くないと言っていないのが微妙なところですね。
【巧言令色】と対句となっているのが、……
【剛毅朴訥、仁に近し】(論語子路十三)です。気性が強くしっかりしてい
て、しかも飾り気がなく無口な人は、【仁】そのものではないが、しかし
【仁】に近いものである、と言っています。~