伝習会 第8回(改訂版)
伝習会
〈 第 八 回 〉 (改訂版)
【 糟糠の妻は堂より下さず 】……後漢書
(訳… 糟糠は酒糟や米糠で、粗末な食べ物のことです。貧しい時代、共に苦労
をして来た妻は、例え夫が後に偉くなり出世をしても、家から追い出すよう
なことをしてはならない)
~ これは後漢(A.D25年)の初代皇帝・光武帝(劉秀)と大司空・宋弘
との会話からの故事です。光武帝に未亡人の姉・湖陽公主がおりました。武帝は、姉が兼ねてから大司空の職にあった宋弘に心を寄せている
ことを知っていました。姉思いの武帝は、姉に「宋弘の気持ちを聞いてみるので、貴女はその屏風の陰に隠れて聞いていて下さい」と言って宋弘を呼び出して、次のような話をしました。
「宋弘殿、諺にもあるが、【貴くして交わりを易え、富ては妻を易う】
(訳―地位が高くなったら、地位に相応しい相手に変えるし、財力も豊かになって来たら、財力に相応しい妻に変える)、とあるが、宋弘殿はどう思われるかの」と、すると宋弘は、
「【貧賎の交わりは忘るべからず、糟糠の妻は堂より下さず】(共に貧しかった時の友は、いつまでも忘れてはいけない、………。)と聞いております」。
泣かせるねえ、宋弘は。太公望に、宋弘のツメの垢でも飲ませてやりたいね。 (いやあ、太公望殿失礼しました)
☆…皇帝・光武帝が宋弘に話した原文です。
【帝、主(姉)をして屏風の後ろに坐せしめ、因りて弘(宋弘)謂いて曰
く、諺に言う、貴くして交わりを易え、富みて妻を易う、と。人の情
か、と。】~