伝習会 第15回
伝習会
〈 第 十 五 回 〉
【 温 故 知 新 】…論語(為政第三)
(訳…古典や先賢の教え、歴史、故事成語などをよく勉強し理解し、自らの基礎・土台をしっかり確立する。そこから自分で工夫し新しい知識や道理を得ること)
~ 叔父田中角栄が好んで揮毫した言葉です。
『故きを温ねて新しきを知る、以って師と為るべし』が原文です。
これが【温故知新】という四字熟語のもとになった言葉です。
過去のことをよく勉強し、知識を得て、これだけは変えては成らない原
理原則をしっかり身に付けて、そういう確固たる土台の上にその時代にマ
ッチした新しい思考や方法を柔軟に取り入れることが肝心です。
そうして始めて 『以って師となるべし』、所謂、そういう人が教師にな
れる、資格が得られる。と言っています。
松尾芭蕉が江戸から奥羽、北陸を経て大垣に達する長旅の模様を記した紀行文「奥の細道」で、俳句の道を説いた【不易流行】という言葉があります。
【不易】とは、いつの時代になっても永遠に変わらないもの、【流行】は、時代とともに変化するものを指しています。
芭蕉は、永遠に変わらないものと時代によって変化していくものとに絶えず目を向けることが、俳句をつくるうえでの最も大事な心得であると教えています。
しかし、この両者を見分けるのは、決して簡単なことではありません。時代によって変わるものと永遠に変わらないものとを正しく識別する観察眼を磨く必要があります。
では、その観察眼は、どうすれば磨くことができるのか?
それには、この世界を肌で感じ、多くの人々と交わり続けることだ、と。
この故事成語は、企業経営にもあてはまり、どんなに世の中が変わっても、「変えてはならないものは絶対に変えない」、という不変の真理と、「時代の変化と共に変えなければならないものは変える」、という柔軟性が必要だといえるのではないでしょうか。~