伝習会 第16回
伝習会
〈 第 十 六 回 〉……西郷南州「偶感」
【幾度か辛酸を経て 志始めて堅し】
(訳…人の志というものは、何度も何度も艱難辛苦を経験して、始めて強固になるものだ)
【丈夫は玉砕するも 甎全を愧ず】
(訳…丈夫(真の男子)たる者は、例え、玉砕(玉の如く美しく砕けるように、名誉、忠義
を重んじ潔く死ぬ)しようとも、目的を遂げるまで志は失わない。私・西郷隆盛は、
志を曲げ、ひび割れ、クズとなった瓦のように、ただ、いたづらに、のうのうと生
きながらえる事を恥じる)
【我が家の遺法 人知るや否や】
(訳…我が家に代々伝わっている家訓がある。ただそれを人が知っているかどうかは知らない)
【児孫の為に 美田を買わず】
(訳…(その家訓とは)自分の子供や孫の為に田畑を買い求めたり財産を残したりしない)
〔注…【偶感】を偶成、【愧ず】を恥ず、【我が家の遺法】を一家の遺事ともいう〕
~ とくに最後の【児孫の為に 美田を買わず】は、よく人口に膾炙されて
います。反対の意味に利用する人もいますね。自分は働きもしないで、残
す財産もないくせに、俺は児孫の為に美田を買わず、だなどと言い訳に使
いますね。鳩山兄弟のような人間にならない為にも心すべき言葉です。
親は子供を可愛がるあまり、ついつい甘やかしがちになりますが、人の
道を外れることのない、強く、優しく、思いやりのある人間となってもら
う為にも、親として西郷家の家訓を心して行きたいものです。
西郷隆盛が大変好んで揮毫した【敬天愛人】(訓読み・天を敬い、人を愛す)
(訳…天、大なるものの前では、人間は謙虚であらねばならない。また、自分を愛する
ほどに人を愛せよ)は、よく知られています。
☆ …“艱難辛苦汝を玉にす”(人間は苦労や困難を乗り越えていく事によって
立派な人間になる)
☆ …涙とともにパンを食べた者でなければ、人生の味は分からない ゲーテ~