伝習会 第34回
伝習会
〈 第三十四回 〉
【奇貨居く可し】……史記
(訳…【奇貨】は、手に入れることが難しい珍品。【居く】は蓄える。そこで【奇貨居くべし】とは、大変な堀出し物で、これは後で、莫大な利益を生むだろうから、今買って蓄えておく価値がある。掘り出し物だ、買っておこうの意)
~ これは、中国の戦国時代(前250年頃)の末期の出来事ですが、後に戦国時代を平定した秦の【始皇帝】にまつわる話です。
当時、秦、趙、韓、魏、斉、燕、楚の七雄が、生き残りを懸けた壮絶な権力闘争を繰り広げていましたが、最後は秦の【始皇帝】が全国を統一しました(B.C221年)。そのいきさつは、秦の王族の中の一人に【子楚】(太子・安国君が側室に生ませた子)という子供が、趙の国に人質となっていました。
そこに、韓の国で莫大な富を築いた【呂不韋】が、趙の国を訪れて【子楚】
を見出した時、【これ奇貨なり。居くべし】と言ったことが故事になりま
した。というのは、当時、秦の【昭襄王】の太子安国君(側室に生ませ
た子楚の父)の妃華陽夫人には子供がおりませんでした。そこで、【呂不韋】
は画策し、とうとう【子楚】を安国君の養子にさせました。ところが、
懐妊している【呂不韋】の娼を、【子楚】がみそめてしまい、自分の妻
にしてしまいました。生まれた子供は【政】という名前で、後の【始皇帝】
となるのですが、勿論、【政】は【呂不韋】の子供であることは当然です。
後に安国君は【孝文王】に、養子となった【子楚】は【荘襄王】に、
そして、【政】は戦国時代を統一して【秦】の王朝を築き、【始皇帝】と
なりました。【呂不韋】は漢の一豪商から、秦の丞相(総理大臣)に就
任しました。まさに、『大当たり』といったところでしょうか。~